ちょっと鍼灸のお話 第2弾|鍼灸の鍼はどのくらい細い?0番・3番など鍼の太さを調べてみました


ちょっと鍼灸のお話 第2弾|鍼灸の鍼の太さ

前回の「鍼と針」から、今度は鍼の太さが気になりました

前回の記事では、8月9日の「はり・きゅうの日」をきっかけに、いろいろ調べました。「鍼灸」は「しんきゅう」なのか「はりきゅう」なのか。「鍼」と「針」は何が違うのか。国家資格ではなぜ「はり師」と書くのか。普段何気なく使っている「はり」という言葉について調べた記事です。
その前日は、令和8年8月8日。患者様のお会計で領収書の日付を見て、「888だ!」と気づいたところから始まっています。
令和8年8月8日、領収書を見たら「888」
そこから翌日の8月9日。「そういえば今日は、はり・きゅうの日じゃん」と調べ始めました。
ちょっと鍼灸のお話 第1弾|鍼灸の日はいつ?8月9日と4月9日を調べてみました
その記事の最後に、また一つ疑問が出てきました。
「鍼灸の鍼と、不妊治療などで使う自己注射の針って、実際どのくらい太さが違うんだろう?」
そこで今度は、注射針と比べてみようと思いました。でも、その前に一つ気づきました。
そもそも「鍼灸の鍼」自体、全部同じ太さではありません。
だったらまずは、私たち鍼灸師が普段使っている「鍼」そのものから調べてみることにしました。

そういえば「チャングムの誓い」の鍼、太かったなあ

鍼の太さについて考えていて、昔見ていた韓国ドラマを思い出しました。
「宮廷女官チャングムの誓い」です。
20年ほど前にNHKで放送されていた頃、私はこのドラマにすっかりはまっていました。
鍼灸師なので、ドラマの中に鍼が出てくると、どうしてもそこに目が行きます。そして当時、画面を見ながら思いました。
「えー、この鍼、めちゃくちゃ太くない?」
普段、日本で使用している細い鍼を見慣れています。そのため、ドラマの中に登場する鍼がずいぶん太く見えました。
もちろん、ドラマで使われた小道具だけで判断することはできません。当時の韓国の鍼灸や、現在の韓国・中国の鍼灸についても同じです。
以前、「日本人と中国の方では肌質などが違う」と聞いたこともあります。そのため、日本では細い鍼を使うようになった、という話でした。
ただ、今回改めて調べてみました。
肌質の違いが、日本で細い鍼が使われるようになった理由だと断定できる資料は確認できませんでした。
一口に「鍼」といっても、すべて同じではありません。形、太さ、使い方にも違いがあります。日本では、日本独自に発達してきた鍼の使い方があります。
なお、「チャングムの誓い」に出てくる鍼のことも気になります。もう一つ、私がおすすめしたい韓国時代劇「馬医」もあります。
こちらはまた別の記事で書いてみたいと思います。

日本では「鍼管」を使う管鍼法が発達しました

日本の鍼灸を語るうえで、とても重要な人物がいます。
杉山和一(すぎやま・わいち)です。
江戸時代の鍼師で、管鍼法(かんしんほう)で知られる人物です。
管鍼法は、細い管の中に鍼を入れて使います。管から少し出ている鍼の頭を、指で軽く叩くようにして刺入する方法です。
現在の鍼灸院でも、患者様がよく目にするものがあります。
「細い鍼が透明な管の中に入っているもの」です。
これを思い浮かべていただくと分かりやすいと思います。
公益財団法人 杉山検校遺徳顕彰会「杉山和一について」

鍼灸の鍼は全部同じ太さではありません

では、実際の鍼の太さを見てみます。
鍼灸師は鍼の太さを、0番、1番、2番、3番……などと呼ぶことがあります。
実際の医療機器の添付文書も確認してみました。製品の一例として、次のような太さがあります。

呼び方 鍼の太さ
00番 0.12mm
0番 0.14mm
1番 0.16mm
2番 0.18mm
3番 0.20mm
4番 0.22mm
5番 0.24mm
8番 0.30mm

PMDA「カナケンディスポ鍼 輝」添付文書
こうして数字を見ると、「0番は0.14mmなんだ」ということは分かります。ただ、0.14mmと言われても、実際の細さは想像しにくいですよね。
そこで次は、病院で使われる注射針とも比べてみたいと思います。不妊治療で使われる自己注射の針も調べてみます。

「0番」でも、鍼は太さだけでは決まりません

鍼には、太さ以外にもいろいろな違いがあります。
たとえば、長さ、鍼先の形状、表面加工などです。鍼柄、鍼管、鍼のしなり方などにも違いがあります。
ですから、「0番という一種類の鍼がある」というわけではありません。太さや長さ、製品の特徴などを考えて、鍼灸師が施術に合わせて使用する鍼を選んでいます。

なかば鍼灸院では、顔には0番を使っています

なかば鍼灸院でも、身体のすべての場所に同じ鍼を使用しているわけではありません。
たとえば、顔には主に0番の細い鍼を使用しています。一方、筋肉量の多い場所などでは、3番の鍼を使用することがあります。
0番=約0.14mm 3番=約0.20mm
数字では、0.06mmの違いです。でも、実際に鍼を扱う側からすると、それぞれ感触が違います。
患者様のお身体や施術する場所、どのような施術を行うのかを考えて鍼を選びます。
そのため、「細ければ細いほど良い」というわけではありません。「太い鍼の方がよく効く」というわけでもありません。
施術する場所や方法に合わせて鍼を選ぶことが大切です。

電気を流す鍼では、太さにも注意が必要です

当院では必要に応じて、刺した鍼に低周波の電気刺激を加えることがあります。いわゆる、鍼に「パルス」を流す方法です。
ここでは、鍼の太さにも注意が必要になります。
カナケンの「カナケンディスポ鍼 輝」のPMDA添付文書を確認しました。鍼電極低周波治療器の電極として使用する場合について記載があります。
φ0.20mm(3番)以上の鍼を使用するよう記載されています。
さらに、腹部・腰部・臀部・足部など、筋肉の収縮によって鍼が大きく曲がる可能性のある場所では、φ0.24mm(5番)以上を使用するよう記載されています。
PMDA「カナケンディスポ鍼 輝」添付文書
私が覚えていた「パルスでは3番以上」という話。実際の製品の添付文書でも、確認できる根拠がありました。
ただし、すべての鍼について一律に決められているわけではありません。法律で「3番以上」と決められている、という意味でもありません。
使用する鍼や治療器に応じて、添付文書や使用上の注意を確認して使用します。

日本の鍼メーカーで有名な「セイリン」

日本の鍼灸鍼メーカーで、とてもよく知られている会社があります。
セイリン株式会社です。
本社は静岡県静岡市清水区にあります。
セイリン株式会社 公式サイト
セイリン株式会社「会社概要」
鍼灸学校に通っていた頃から、名前をよく目にするメーカーです。私にとっても、「鍼灸鍼のメーカー」と聞いて、まず思い浮かぶ会社の一つです。

小さな一本の鍼ですが、製造工程はかなり細かい

セイリンの公式サイトでは、一本の鍼ができるまでの製造工程も公開されています。
まず、原材料となるステンレス鋼線の受入検査があります。その後、直線加工、鍼先の研削、洗浄、組み立てへ進みます。
さらに、包装、滅菌、製品管理、出荷という工程を経ています。
鍼先についても検査が行われ、ロット単位で形状や寸法などが確認されています。
セイリン株式会社「生産工程」
セイリン株式会社「先端技術」
患者様からすると、「ものすごく細い針金みたいなもの」に見えるかもしれません。
でも、小さな一本の鍼にも、鍼先、線径、長さ、鍼柄との接合、包装や滅菌など、いろいろな管理があります。

鍼にはロット番号があり、製造履歴を追跡できます

ここも、患者様にはあまり知られていないところだと思います。
セイリンの場合、個包装された鍼にはサイズ、滅菌LOT、使用期限などの情報が印字されています。
さらに公式サイトでは、ロット番号から出荷検査履歴、滅菌履歴、使用したステンレス鋼線の購入履歴などを確認できると説明されています。
セイリン株式会社「生産工程・ロットトレース」
患者様の目の前に出てくるのは、本当に小さな一本の鍼です。その一本についても、製造や滅菌の履歴を確認できる仕組みがあります。
ただし、すべての鍼が同じ管理方法という意味ではありません。製品やメーカーによって管理方法は異なります。

そんなに有名なセイリンを、なぜ当院では使っていないの?

ここまでセイリンについて書くと、こう思われるかもしれません。
「じゃあ、なかば鍼灸院でもセイリンの鍼を使っているんですよね?」
実は、現在当院では別のメーカーの鍼を使用しています。
これは、セイリンの鍼が良くないからではありません。
製造工程や品質管理についても詳しく公開されている、日本の有名な鍼メーカーです。
では、なぜ当院では別の鍼を使っているのか。
ものすごく単純に言うと、私の手には、現在使用している鍼の方が合うからです。
鍼灸師が鍼を扱うときには、太さ以外にも、鍼柄を持ったときの感覚、鍼のしなり方、表面の滑らかさ、刺入するときの感覚、鍼先の感触、鍼管との組み合わせなどに違いがあります。
セイリンの鍼は非常に滑らかです。ただ、私の場合は、その滑らかさが逆に少し「つるつるする」と感じます。
これは品質が良い・悪いという話ではありません。鍼灸師と道具との相性だと思います。
料理人によって使いやすい包丁が違うことがあります。大工さんによって使いやすい道具が違うこともあります。それと少し似ているかもしれません。
鍼灸師にも、「私はこの鍼が使いやすい」というものがあります。

では0.14mmって、注射針と比べるとどのくらい?

さて、ようやく前回の記事の最後に出てきた疑問へ戻ります。
当院で顔などに使用する0番の鍼は、およそ0.14mmです。身体で使用することのある3番は、およそ0.20mmです。
では、病院で使われる注射針と比べるとどうなのでしょう。
鍼灸の鍼は、どのくらい細いのでしょう?
当院では、妊活・不妊治療中の患者様からお話を伺うことがあります。病院で使用している自己注射についてのお話もあります。
不妊治療では、ペン型の注入器を使うことがあります。排卵誘発などのために、ご自身で注射をされている方もいらっしゃいます。
その自己注射の針は、何Gで何mmなのでしょう。HMGなどの注射では、どのくらいの針が使われるのでしょう。
そして、注射針に使われる「○G(ゲージ)」とは何なのでしょう。
鍼灸鍼には、「0番・1番・3番」などがあります。注射針には、「30G・32G」などがあります。
これは同じ規格なのでしょうか。

「鍼灸の鍼は注射針の穴に入る」って、本当?

私は患者様に、こんな説明をすることがあります。
「鍼灸の鍼は、注射針の穴に入ってしまうくらい細いものもあります」
でも今回、ここまで調べ始めたら、また気になってしまいました。
「待てよ。本当に入るの?」
注射針には、外側の太さである外径があります。でも、それだけではありません。
薬液などが通る内側の穴、つまり内径があります。
本当に注射針の中へ鍼灸の鍼が入るのでしょうか。
確認するなら、鍼灸鍼の外径を見る必要があります。そして、注射針の内径と比べなければいけません。
せっかくなので、ここも実際の製品や規格を調べてみることにしました。
次の記事では、不妊治療で使用される自己注射の針も調べます。
「鍼灸の鍼と注射針、本当はどっちがどのくらい細い?」
これを実際の数字で比べてみたいと思います。妊活・不妊治療で自己注射をされている患者様にも、分かりやすい形にしたいと思います。

今回調べて分かったこと

鍼灸の「鍼」と一口に言っても、一種類ではありません。
0番、1番、2番、3番など、さまざまな太さがあります。長さや鍼先、表面加工などにも違いがあります。
当院では、顔には細い0番を使っています。筋肉量の多い場所などでは、3番を使うことがあります。このように、施術する場所や方法によって使い分けています。
低周波の電気刺激を加える場合には、鍼の太さにも注意が必要です。実際の製品の添付文書には、3番以上などの使用条件が示されているものがあります。
また、小さな一本の鍼でも、製造、滅菌、ロット管理など、さまざまな品質管理が行われています。
前回は、「鍼と針って何が違うんだろう?」
今回は、「鍼灸の鍼って、そもそも何mmなんだろう?」
そして次は、「じゃあ、注射針と比べたら?」
一つ調べると、また次が気になってきます。

🍀「ちょっと鍼灸のお話」シリーズ

今回の記事は、「ちょっと鍼灸のお話」第2弾です。
第1弾 鍼灸の日はいつ?8月9日と4月9日を調べてみました(8月9日公開)
第2弾【今回】 鍼灸の鍼はどのくらい細い?0番・3番など鍼の太さを調べてみました(8月11日公開)
第3弾【次回】 病院で使う注射針って?採血・点滴・筋肉注射・自己注射を調べてみました

なかば鍼灸院の鍼灸について

なかば鍼灸院は、一宮市木曽川町にあります。
妊活・不妊治療・不育症、円形脱毛症などについて鍼灸施術を行っています。耳鳴り・突発性難聴などについても施術を行っています。
鍼について不安がある方には、実際に使用する鍼をご覧いただくこともできます。必要に応じて、鍼について説明しながら施術しています。
なかば鍼灸院「鍼灸とは」
妊活・不妊鍼灸(不妊症・不育症)について

今回確認した主な資料・公式情報

今回の記事では、鍼の太さや管鍼法について資料を確認しました。鍼通電時の注意事項や、鍼の製造・品質管理についても確認しています。

※「日本人と中国の方では肌質が違うため、日本では細い鍼を使うようになった」という説明については、今回確認した資料では十分な根拠を確認できませんでした。そのため、事実としては記載していません。
※「宮廷女官チャングムの誓い」と「馬医」に登場する鍼灸については、今回の記事とは分けます。別の記事で改めて調べてみたいと思います。

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