
本当は「鍼灸の鍼と病院の注射針」を比べる予定でした
前回の記事では、鍼灸で使う鍼の太さについて調べました。0番は約0.14mm、3番は約0.20mm。数字で見ると、とても細いことは分かります。
▶ 鍼灸の鍼はどのくらい細い?0番・3番など鍼の太さを調べてみました
➡こちらが第2弾です。8月11日にアップしました。
そして前回の最後に、「では、病院で使う注射針と比べたら、どのくらい違うの?」という疑問が出てきました。
本当は今回、鍼灸の鍼と病院で使う注射針を、そのまま比べる予定でした。
ところが、病院の注射針について調べ始めると、
「採血と点滴の針は同じなの?」
「皮下注射と筋肉注射は何が違うの?」
「不妊治療の自己注射では、どんな針を使うの?」
「そもそも○G(ゲージ)って何?」
と、また次々に気になることが出てきました。
調べてみると、同じ「注射針」と呼んでいても、使う目的や場所によっていろいろ違います。病院の注射針だけでも、思っていた以上に奥が深い。
そこで予定を少し変更します。今回は「ちょっと鍼灸のお話」第3弾として、まず病院で使われる注射針について調べてみます。そして次の第4弾で、いよいよ鍼灸の鍼と病院の注射針を比べてみたいと思います。
そもそも注射は、身体のどこまで針を入れるの?
「注射」と一口に言っても、すべて同じ場所へ薬を入れているわけではありません。皮膚の中に入れるものもあれば、皮膚の下にある皮下組織へ入れるものもあります。血管を目標にする採血や点滴もあります。さらに奥にある筋肉へ薬を入れる筋肉注射もあります。
まずは、皮膚の表面から奥へ向かうイメージで並べてみます。
| 注射など | 針が目標にするところ |
|---|---|
| 皮内注射 | 皮膚の中 |
| 皮下注射・自己注射 | 皮膚の下の皮下組織 |
| 採血 | 静脈 |
| 静脈注射 | 静脈 |
| 点滴 | 静脈 |
| 筋肉注射 | さらに奥の筋肉 |
※これは「どこを目標にする注射なのか」を分かりやすく並べたものです。静脈の深さや皮下脂肪の厚さなどには個人差があるため、「採血は皮膚から必ず○mm」と一律に決められるものではありません。
不妊治療の自己注射は、このあたりです
当院では、妊活・不妊治療中の患者様から、普段の会話の中で自己注射のお話を伺うことがあります。病院からペン型の注入器を渡され、ご自身でお腹などに注射されている方もいらっしゃいます。
たとえば、ゴナールエフ皮下注ペンは皮下に注射する薬です。また、HMG製剤でも自己注射が行われることがあります。
HMG製剤について確認すると、製品によって皮下注射として使用されるものがあり、患者様向け資料では上腕、大腿、腹部、臀部などが注射部位として示されているものもあります。
【妊活・不妊治療中の方へ】
ペン型の自己注射などでは、皮膚の下にある皮下組織へ注射するものがあります。HMGなども、製剤や治療方法によって皮下注射または筋肉注射として使用されるものがあります。実際の注射方法・注射部位・使用する針については、使用している薬や病院からの指示に従ってください。
「自己注射」といっても、全部同じ針、全部同じ方法というわけではないんですね。
注射針の「○G」って何?
病院の注射針を調べていると、21G、23G、25G、27G……という数字が出てきます。このGは「ゲージ」と読みます。
鍼灸では0番、1番、2番、3番などと呼ぶので、最初は少しややこしく感じます。しかも注射針では、数字が大きくなるほど針が細くなります。
厚生労働省の資料では、注射針などについて「針外径」とG(ゲージ)の対応が示されています。
| ゲージ(G) | 針の外側の太さ |
|---|---|
| 21G | 0.80mm |
| 22G | 0.70mm |
| 23G | 0.60mm |
| 24G | 0.55mm |
| 25G | 0.50mm |
| 26G | 0.45mm |
| 27G | 0.40mm |
| 29G | 0.33mm |
つまり、21Gより27Gの方が細い。
数字が大きくなるほど細くなるので、慣れないと少し不思議です。これは鍼灸治療で使う鍼とは反対です。鍼灸の鍼は、0番、1番、2番、3番……と、数字が大きくなるほど太くなります。
▶ 厚生労働省「注射針等カラーコードの統一について」
G(ゲージ)は、注射針の「外側の太さ」を見ています
ここは、今回調べていて大事だと思ったところです。
厚生労働省の資料を見ると、表には「針外径」と書かれています。つまり、G(ゲージ)と対応させているのは、注射針の外側の太さです。
注射針は、鍼灸の鍼とは違って中が空洞になっています。その穴の中を薬液などが通ります。
ですから注射針には、外側の太さ=外径と、中の穴の太さ=内径があります。
この「内径」が、あとで大変重要になってきます。なぜなら、私が本当に知りたいのは、「鍼灸の鍼は、注射針の中の管に入るの?」だからです。
注射針は、先っぽの形まで全部同じではありません
さらに調べていて、もう一つ気になりました。「注射針って、先っぽは全部同じなの?」
注射針というと、先端が斜めに切られた形を思い浮かべます。でも、この斜めの部分も一種類ではありません。
ニプロの公式情報では、注射針の刃面について、RB(レギュラーベベル)は12°、SB(ショートベベル)は18°と説明されています。
| 針先 | 刃面の角度 |
|---|---|
| RB レギュラーベベル |
12° |
| SB ショートベベル |
18° |
同じ「注射針」に見えても、先端の形まで全部同じというわけではないんですね。
▶ ニプロ「よくあるご質問・RBとSBの違い」
「細い針なら痛くない」だけではなさそうです
ここまで調べると、もう一つ気になってきます。「注射が痛い・痛くないって、針の太さだけなの?」
針の太さはもちろん関係する要素の一つです。でも、注射針には太さだけではなく、長さや針先の形などにも違いがあります。さらに、どこへ刺すのか、どのように刺すのかによっても条件は変わります。
ですから、「○Gだから絶対に痛い」、「細ければ絶対に痛くない」と、太さだけで単純に決められるものではなさそうです。
今回の記事では痛みそのものを詳しく調べるところまでは広げませんが、注射針は「太さだけを見ればよいものではない」ということは分かりました。
採血・点滴・皮下注射・筋肉注射では、目的が違います
ここまでを、患者様向けにできるだけ簡単にまとめてみます。
| 何をする? | 主な目標 |
|---|---|
| 採血 | 静脈から血液を採る |
| 静脈注射 | 静脈へ薬を入れる |
| 点滴 | 静脈から薬液などを入れる |
| 皮下注射・自己注射 | 皮下組織へ薬を入れる |
| 筋肉注射 | 筋肉へ薬を入れる |
同じ「注射」という言葉でも、目的が違います。そのため、使われる針も一種類ではありません。太さ、長さ、針先などを目的に合わせて使い分けています。
そして今回、一番びっくりしたこと
ここからが、私が今回調べていて一番びっくりしたところです。
そもそも私は、「鍼灸の鍼は、本当に注射針の管に入るの?」を確認したかったんです。
だったら簡単です。注射針の中の穴、つまり「内径」を調べればいい。そう思って調べ始めました。
ところが、「あれ? ○Gなら、中の穴の太さも決まっているんじゃないの?」と思ったら、そう単純ではありませんでした。
厚生労働省の資料でG(ゲージ)と対応しているのは針外径です。ところが注射針は中が空洞です。同じ外側の太さでも、針の金属部分の壁の厚さが違えば、中の穴の大きさも変わります。
つまり、「30Gなら、内径は必ず○mm」と、Gの数字だけを見て決めることはできません。
しかも、メーカーの製品情報をいろいろ確認してみると、外径は確認できても、内径までは分かりやすく公表されていない製品もありました。
これは今回、かなり驚きました。「えー!そこは全部同じじゃないの?」と思いました。
鍼灸の鍼が注射針の穴に入るかどうかを調べようとしただけなのに、思わぬところで話が広がりました。内径まで確認できる製品についても見つけることができましたので、次回はそこから実際に比較してみます。
では、鍼灸の鍼は本当に注射針の管に入るの?
ようやく本来やりたかった、「鍼灸の鍼と病院の注射針の比較」です。
ただ、ここまででかなり長くなりました。そこで、この比較は次の「ちょっと鍼灸のお話」第4弾で行います。
鍼灸の鍼の太さと、注射針の外径・内径を実際の数字で比べながら、「鍼灸の鍼は、本当に注射針の穴の管に入るの?」を確認してみたいと思います。
今回調べて分かったこと
病院で使われる注射針は、一種類ではありません。採血、静脈注射、点滴、皮下注射、筋肉注射など、目的によって使い分けられています。
不妊治療でも、皮下に行うペン型の自己注射や、HMG製剤などの注射があります。
注射針の太さにはG(ゲージ)という表示があります。そしてGと対応しているのは、基本的に針の外側の太さ(外径)です。
また、注射針は太さだけでなく、長さや針先にも違いがあります。そして今回、私が一番驚いたのが内径でした。同じGだからといって、中の穴の太さまで一つの数字で決まるわけではありません。
鍼灸の鍼と比べるために注射針を調べ始めたのですが、病院の注射針だけでも、思っていた以上に奥が深いことが分かりました。一つ調べると、また次が気になってしまいます。
不妊治療の自己注射が不安な方へ|参考になる動画
当院では、妊活・不妊治療中の患者様との普段の会話の中で、自己注射の大変さや不安についてお聞きすることがあります。
もちろん、自己注射をされる患者様は、通院されている病院・クリニックで注射の方法について指導を受けていらっしゃいます。
それでも、初めてご自宅で自己注射をするときには、「これで合っているかな?」、「病院で教えてもらったけれど、実際に一人でやるとなるとちょっと怖い」と感じることもあるようです。
病院で受けた説明をもう一度確認したいときや、実際の流れを動画で見ておきたいときに、少しでも自己注射に対する恐怖心や不安が和らぐことがあればと思い、参考としていくつかご紹介します。
自己注射の準備から打ち方まで
自己注射の空気抜き
ペン型・アンプル・バイアルの自己注射
▶ 皮下ペン注射のやり方(両角レディースクリニック)
▶ アンプル注射のやり方(両角レディースクリニック)
▶ バイアル自己注射のやり方
※ここでご紹介している動画は、病院で指導を受けた内容をもう一度確認するときの参考として掲載しています。
実際の自己注射の方法、薬剤、注射部位、使用する針などについては、必ず現在通院されている病院・クリニックの指示に従ってください。
🍀「ちょっと鍼灸のお話」シリーズ
今回の記事は、「ちょっと鍼灸のお話」第3弾です。
第1弾
鍼灸の日はいつ?8月9日と4月9日を調べてみました
➡8月9日にアップしました。
第2弾
鍼灸の鍼はどのくらい細い?0番・3番など鍼の太さを調べてみました
➡8月11日にアップしました。
第3弾【今回】
病院で使う注射針って?採血・点滴・筋肉注射・自己注射を調べてみました
第4弾【次回予定】
鍼灸の鍼と病院の注射針を比べてみると?本当に注射針の管に入る?
第4弾では、今回調べていて一番驚いた、「○G(ゲージ)で分かるのは針の外側の太さ。では、中の穴の太さは?」という疑問から、実際に鍼灸の鍼と注射針を比べてみたいと思います。
なかば鍼灸院の鍼灸について
なかば鍼灸院は、一宮市木曽川町にあります。
妊活・不妊治療・不育症、円形脱毛症などについて鍼灸施術を行っています。耳鳴り・突発性難聴などについても施術を行っています。
鍼について不安がある方には、実際に使用する鍼をご覧いただくこともできます。必要に応じて、鍼について説明しながら施術しています。
▶ なかば鍼灸院「鍼灸とは」
▶ 妊活・不妊鍼灸(不妊症・不育症)について
今回確認した主な資料・公式情報
今回の記事では、注射針のG(ゲージ)と外径、注射方法、針先の形、不妊治療で使われる自己注射などについて、厚生労働省・PMDA・メーカー公式情報を確認しました。
- 厚生労働省「注射針等カラーコードの統一について」
注射針の針外径とG(ゲージ)の対応、カラーコードについて確認しました。 - PMDA「HMG注用75単位『あすか』・患者向医薬品ガイド」
HMG製剤の皮下注射方法、注射部位、27Gなどの注射針について確認しました。 - PMDA「ゴナールエフ皮下注ペン・患者向医薬品ガイド」
不妊治療などで使用されるペン型製剤が皮下注射で使用されることを確認しました。 - ニプロ「医療機器情報・よくあるご質問」
注射針のRB(レギュラーベベル)とSB(ショートベベル)の刃面角度について確認しました。
※注射針の太さや長さ、注射方法は、使用する薬剤・製品・注射部位・患者様の状態などによって異なります。この記事の表は「この注射なら必ずこの針を使う」という意味ではありません。
※注射薬や自己注射については、実際に使用している薬剤の添付文書および医師・看護師など医療機関からの指示に従ってください。
※注射針の内径については、次回の記事で、内径を確認できる実際の製品を使って鍼灸の鍼と比較する予定です。

