
鍼灸の鍼と注射針を比べてみます
「ちょっと鍼灸のお話」も第4弾になりました。
今回のテーマは、「鍼灸の鍼と注射針」です。
第2弾では、鍼灸で使う鍼そのものの太さを調べました。
当院で顔などに使う0番は約0.14mm、身体の治療で使うことのある3番は約0.20mmです。
▶ 第2弾|鍼灸の鍼はどのくらい細い?0番・3番など鍼の太さを調べてみました
本当は第3弾で、そのまま病院の注射針と比べる予定でした。
ところが病院の注射針を調べ始めたら、
「そもそもG(ゲージ)って何?」
「採血と点滴と筋肉注射では、針は同じなの?」
「注射針の管の内側は、何mmなの?」
と、また話が広がってしまいました(笑)。
そのため第3弾は、病院の注射針だけを調べる記事になりました。
そして今回は、ようやく本来やりたかった、
「鍼灸の鍼は、本当に病院の注射針の管の中に入るくらい細いの?」
を実際の数字で比べてみます。
なぜ「注射針の管に入る」と説明しているの?
初診の患者様から、「鍼って痛いんですか?」と聞かれることがあります。
「鍼」と聞くと、縫い針や病院で使う注射針を思い浮かべられる方も多いのかな、と思います。
そんなとき私は、
「鍼灸の鍼は、病院の注射針の管の中に、すこんと入るくらい細いものもあるんですよ」
と説明することがあります。
ところが今回、
「私、そう説明しているけど、本当にどの注射針なら入るんだ?」
と気になってしまいました(笑)。
顔に使う0番0.14mmなら、どのくらい細い注射針の管まで入るのでしょうか。
身体に使う3番0.20mmなら、普段病院で使われている注射針の管に入るのでしょうか。
そこで今回は、鍼灸の鍼と注射針の太さを、外径と内径の両方から比べてみます。
表を見る前に、ちょっとだけ注意です
ここから数字が出てくるので、先に2つだけ注意点です。
① 注射針の「外径」と「内径」は違います
注射針は、中が空洞になった細い管です。
外径=注射針の外側の太さ
内径=注射針の管の内側の太さ
です。
G(ゲージ)で示される太さは、基本的に注射針の外径です。
でも今回知りたいのは、
「鍼灸の鍼が、注射針の管の中に入るのか?」
なので、本当に比べなければならないのは内径です。
ところが第3弾で調べて分かったように、
同じG(ゲージ)でも、内径がすべて同じとは限りません。
同じGでも、管を作っている金属の壁の厚さなどによって、内径が違う製品があります。
そのため今回、「入る・入らない」を比べるところでは、実際に内径まで確認できた製品・資料の数字を使います。
② 注射針と鍼灸の鍼では、数字の見方が逆です
これもちょっとややこしいです(笑)。
病院の注射針は、
21G → 23G → 25G → 27G → 30G → 34G
と、Gの数字が大きくなるほど細くなります。
ところが鍼灸の鍼は、
0番 → 1番 → 2番 → 3番
と、数字が大きくなるほど太くなります。
病院の注射針と鍼灸の鍼では、数字の進み方が反対です。
ですので、番号だけを見るのではなく、実際に何mmなのかを一緒に見てください。
皮膚の表面から筋肉まで順番に比べてみます
注射と一口に言っても、針を入れる場所は同じではありません。
皮膚の中に入れるもの、皮膚の下の皮下組織へ入れるもの、静脈を目標にするもの、さらに奥の筋肉へ入れるものがあります。
そこでこの表では、皮膚の表面から身体の奥へ向かう順番を基準にして並べました。
| 皮膚からの順番 | 注射の例・鍼灸の鍼との比較 |
|---|---|
| ① 皮膚の中 | 皮内注射 皮膚の中を目標にする注射です。 |
| ② 皮膚の下 皮下組織 |
皮下注射・自己注射 ★ 不妊治療でもよく使いますガニレストなど、皮下へ自己注射する薬があります。HMG製剤にも皮下注射として使用されるものがあります。ペン型自己注射の極細針の例テルモのペン型注入器用34G針 外径:約0.18mm 内径:約0.064mm 当院の0番:約0.14mm外径 0.18mm > 0番鍼 0.14mm > 内径 0.064mm→ 0番鍼は注射針の外径より細いです。 → しかし内径よりは太いため、管には入りません。※これはテルモの34Gペン型注入器用針について、公表されている外径・内径と数字で比べたものです。ペン型の針がすべて同じ外径・内径という意味ではありません。 |
| ③ 皮下を走る静脈 | 採血・静脈注射・点滴採血や静脈注射では21G・23Gなどが使われる例があります。点滴では留置針などが使われ、血管や目的などによって選ばれる針が変わります。
外径の例 21G=外径 約0.80mm ※ここはGと外径のイメージを示しています。使用する製品の内径を特定していないため、0番・3番が管に入るかの判定はしていません。 |
| ④ さらに奥の筋肉 | 筋肉注射 ★ 不妊治療でも使われることがあります薬剤・製品によって筋肉内に投与されるものがあります。25Gの一般注射針の例外径:約0.50mm 内径:約0.26mm 当院の3番:約0.20mm外径 0.50mm > 内径 0.26mm > 3番鍼 0.20mm→ 3番鍼は注射針の外径より細く、さらに内径よりも細いです。 → この25Gの内径例では、3番鍼は管の中に入る大きさです。※筋肉注射で25Gが使われる例と、JBPが公表している一般注射針25Gの内径例を使って太さを比較しています。「筋肉注射は必ずこの25G製品を使用する」という意味ではありません。 |
※この表は「どこを目標に針を入れるのか」を、皮膚の表面から身体の奥へ向かう順番で並べています。静脈の深さや皮下脂肪の厚さなどには個人差があります。
※注射針の外径と内径は別の数字です。「管に入る・入らない」は、内径まで確認できた製品・資料だけで判定しています。
※「入る大きさ」「入らない大きさ」は、公表されている寸法を数字で比較した結果です。実際にそれぞれの製品へ鍼灸鍼を通して確認した実験結果ではありません。
ペン型は0番でも管に入らないものがあります
私は最初、不妊治療などで使われる細い自己注射の針を見ながら、
「このくらいの注射針の管なら、0番の鍼が入るのかな?」
と思っていました。
ところが、極細のペン型注入器用針を調べてみると、ちょっと面白いことが分かりました。
テルモには、インスリンなどの自己注射に使う34Gのペン型注入器用針があります。
先端の外径は約0.18mmです。
さらに海外の公的資料で同製品の寸法を確認すると、先端の内径は約0.064mmとされています。
当院で顔などに使う0番は0.14mmです。
数字を大きい順に並べると、
注射針の外径 0.18mm > 0番鍼 0.14mm > 注射針の内径 0.064mm
となります。
つまり、外径だけを比べれば、0番鍼0.14mmは、この34G注射針の外径0.18mmより細いんです。
ところが、管の内側は0.064mmです。
そのため、
0番鍼は注射針の外径より細い。でも、この注射針の管の中には入らない。
という結果になります。
これは私も少し意外でした。
「鍼灸の鍼は注射針の管に入るくらい細い」と言っても、どの注射針の管にも入るわけではないんですね。
ここで、外径と内径の両方を見ることが大切だということがよく分かりました。
不妊治療の自己注射は全部同じ針ではありません
ここは妊活・不妊治療中の患者様には、特に注意していただきたいところです。
不妊治療では、皮下注射として使用する薬がいくつもあります。
たとえばガニレストは、へその下や太ももへ自己注射する方法が公式資料でも案内されています。
HMG製剤にも、皮下注射として自己注射するものがあります。
また、ペン型の注入器を使用する薬もあります。
ただし、
「不妊治療の自己注射=全部同じG」
ではありません。
まして、
「ペン型だから全部34G」
でもありません。
使う薬・製品・注射器によって針が違います。
そのため今回の記事でも、ガニレストなどについて内径まで公式に確認できないものは、「0番が入る」「3番が入る」と決めつけないことにしました。
【不妊治療中の方へ】
「自己注射」と一口に言っても、薬剤や製品によって注射針は異なります。この記事の太さ比較を、ご自身が使用している注射針のサイズとして読み替えないでください。実際の自己注射は、現在通院している病院・クリニックから説明された方法に従ってください。
身体に使う3番は25Gの管に入る大きさの例がありました
当院で身体などに使う3番は、約0.20mmです。
筋肉注射では、23~25Gの針が使われる例があります。
そこで25Gを見てみます。
25Gの外径は約0.50mm。
さらにJBPが公表している一般注射針の比較例では、
25Gの内径=約0.26mm
です。
外径・内径・3番鍼を一緒に並べてみます。
注射針の外径 0.50mm > 注射針の内径 0.26mm > 3番鍼 0.20mm
つまり、この25Gの例では、
3番鍼は注射針の外径より細く、さらに管の内径よりも細い
ことになります。
そのため、
身体に使う3番の鍼が、注射針の管の中に入る大きさ
です。
私が患者様に、
「鍼灸の鍼は、病院の注射針の管の中に入るくらい細いものもあるんですよ」
と説明していたことは、実際の数字で比べても成り立つ組み合わせがありました。
ただし、ここでも「25Gなら全部内径0.26mm」ではありません。
同じGでも内径は製品によって変わります。
顔に使う0番はどのくらいの管に入る?
顔などに使う0番は0.14mmです。
JBPが示している一般注射針の比較例では、30Gの内径が約0.15mmとされています。
数字の上では、
内径0.15mm > 0番鍼0.14mm
です。
ですから、この30Gの内径例では、0番は管の中に入る大きさです。
ただし差は0.01mmしかありません。
かなりギリギリです。
一方、先ほどの34Gペン型注入器用針の例では、先端内径が約0.064mmなので、0番は入りません。
つまり、
「30Gなら入る、34Gなら入らない」
とGだけで覚えるのも正確ではありません。
大事なのは、
実際にその製品の内径が何mmなのか
です。
今回いちばん驚いた「内径」の話
そもそも私は、
「27Gとか30Gと決まっているなら、中の管の太さまで決まっているんだろう」
と思っていました。
ところが、そうではありませんでした。
G(ゲージ)で分かるのは、基本的に注射針の外径です。
注射針は中が空洞になった管なので、同じ外径でも、金属の壁の厚さや構造が違えば内径も変わります。
実際、JBPは超薄壁の注射針について、外径を細く保ちながら内径を広くした製品を公表しています。
つまり、
同じGでも、内径まで一つの数字に決まっているわけではない。
ここは今回、私が一番驚いたところでした。
「えー!そこは全部同じじゃないの?」
です(笑)。
鍼灸の鍼が注射針の管に入るかを調べたかっただけなのに、最後は注射針の金属の壁の厚さまで調べることになりました。
ペン型の自己注射は不妊治療だけではありません
ペン型や自己注射の薬は、不妊治療だけで使われているものではありません。
糖尿病のインスリン注射などでもペン型注入器が使われています。
また、関節リウマチなどの治療でも、患者様ご自身が皮下注射するタイプの薬があります。
つまり、ペン型自己注射という形自体は、不妊治療だけに使われているものではありません。
ただし、
ペン型だから全部同じ太さの針
というわけではありません。
製品によって使用する針や構造が違います。
太さだけで「痛い・痛くない」は決まりません
ここまで数字を比べると、
「じゃあ細い鍼なら絶対に痛くないの?」
と思われるかもしれません。
そう単純でもありません。
第3弾でも調べましたが、病院の注射針は太さだけではなく、針先の形にも違いがあります。
鍼灸の鍼も、太さだけではなく、鍼先の形や表面加工などが違います。
さらに、刺す場所、刺し方、刺激の方法などによって感じ方も変わります。
ですから、
「細いから絶対に痛くない」
とは言えません。
ただ、初めて鍼灸を受ける方が想像される「縫い針」や「病院の注射針」と、当院で使う0番・3番の鍼は、太さや構造がかなり違うということは知っていただければと思います。
鍼灸の鍼と注射針を比べて分かったこと
今回、最初に知りたかったのは、
「鍼灸の鍼は、本当に病院の注射針の管に入るくらい細いの?」
という、とても単純な疑問でした。
調べてみると、
入る組み合わせは、本当にありました。
顔などに使う0番 0.14mm
極細の34Gペン型注入器用針の例では、
注射針の外径 0.18mm > 0番鍼 0.14mm > 注射針の内径 0.064mm
となります。
つまり、
0番鍼は注射針の外径より細い。でも、この注射針の管には入らない。
ということになります。
一方、一般注射針30Gの内径0.15mmという比較例では、
内径0.15mm > 0番鍼0.14mm
なので、数字の上では管に入る大きさでした。
身体などに使う3番 0.20mm
一般注射針25Gの例では、
注射針の外径 0.50mm > 注射針の内径 0.26mm > 3番鍼 0.20mm
となります。
つまり、
3番鍼は注射針の外径より細く、さらに内径よりも細いため、この例では管の中に入る大きさです。
こうして鍼灸の鍼と注射針を比べてみると、
「鍼灸の鍼は、どんな注射針の管にも入る」
ではありません。
正確には、
「鍼灸の鍼は、病院の注射針の管の中に入ってしまうくらい細いものもあります」
でした。
そして今回、一番驚いたのは、
G(ゲージ)が同じなら内径まで全部同じ、というわけではなかったこと。
外径だけを見ても、管に入るかどうかは分かりません。
外径と内径は別。
ここが今回、調べてみて一番面白かったところでした。
一つ調べると、また次が気になってしまいます(笑)。
🍀「ちょっと鍼灸のお話」シリーズ
今回の記事は、「ちょっと鍼灸のお話」第4弾です。
第1弾
鍼灸の日はいつ?8月9日と4月9日を調べてみました
➡8月9日にアップしました。
第2弾
鍼灸の鍼はどのくらい細い?0番・3番など鍼の太さを調べてみました
➡8月11日にアップしました。
第3弾
病院で使う注射針って?採血・点滴・筋肉注射・自己注射を調べてみました
➡8月12日にアップしました。
第4弾【今回】
鍼灸の鍼は、本当に病院の注射針の管の中に入る?0番・3番で比べてみました
なかば鍼灸院の鍼灸について
なかば鍼灸院は、一宮市木曽川町にあります。
妊活・不妊治療・不育症、円形脱毛症などについて鍼灸施術を行っています。
耳鳴り・突発性難聴などについても施術を行っています。
鍼について不安がある方には、実際に使用する鍼をご覧いただくこともできます。
必要に応じて、鍼について説明しながら施術しています。
今回確認した主な資料・公式情報
今回の記事では、鍼灸鍼の太さ、注射針のG(ゲージ)と外径・内径、皮下注射、ペン型自己注射、筋肉注射などについて、公的機関・メーカー公式資料を確認しました。
- PMDA「カナケンディスポ鍼 輝」添付文書
鍼灸鍼の0番0.14mm、3番0.20mmなどの線径について確認しました。 - 厚生労働省「注射針等カラーコードの統一について」
注射針のG(ゲージ)と針外径の対応について確認しました。 - 日本生物製剤「JBP Nanoneedle」
一般注射針および超薄壁注射針の外径・内径について確認しました。 - テルモ「ナノパスJr.」
ペン型注入器用34G針の外径や用途について確認しました。 - 米国FDA「Terumo Pen Injector Needle」資料
テルモ34Gペン型注入器用針について、先端の外径・内径を確認しました。 - オルガノン「ガニレスト皮下注0.25mgシリンジ 患者向医薬品ガイド」
ガニレストの自己注射・皮下注射について確認しました。
※注射針の「入る・入らない」は、公表されている内径と鍼灸鍼の太さを数字で比較したものです。実際に各製品へ鍼灸鍼を通して確認した実験結果ではありません。
※同じG(ゲージ)でも内径は製品によって異なります。この記事に掲載した内径を、そのGすべてに共通する数字として扱わないでください。
※注射で使用する針のG・長さ・形状などは、薬剤・製品・投与方法・患者様の状態などによって異なります。
※不妊治療などの自己注射は、実際に使用している薬剤の説明書と、医師・看護師など医療機関からの指示に従ってください。

